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「EUというスタンダード」 一橋大学 副学長 山内 進

 ヨーロッパ連合(EU)に関する世界最高水準の高度教育研究拠点を目指すべく、一橋大学と慶応義塾大学が共同で大学院を設置する計画が決まった。

 国境を超えた移動や雇用の自由化、統一通貨による世界最大規模の経済圏など、近年、政治的・経済的統合を急速に進めているEUが、アメリカに対抗する巨大な存在になっているのは言うまでもない。

 特に注目すべきなのは、その規範形式パワーである。EUはEU理事会や欧州議会という立法府、欧州委員会という行政府、欧州司法裁判所という司法府などによって運営され、個々の構成国とは別にEUとしてのさまざまな課題への意思決定を、ヨーロッパの利害と理念を基準に下している。

 ヨーロッパの理念とは、歴史的にさまざまな淵源や解釈がありうるが、直接的には過去の大戦の反省を踏まえ、戦争を避け平和で豊かな社会を実現するために、人権を重視するということが基本であろう。EUが外交に力を入れ、軍事力に頼らないソフト・パワーを目指しているのもこのためだ。

 欧州委員会が、怜悧に、しかもきわめて理念的・理論的に運営されることは、日本人の感覚からするとやや異質でわかりにくいところかもしれない。

 しかし、理解不足を放置しておくわけにはいかないだろう。たとえば、競争法違反で欧州委員会はマイクロソフトに多額の制裁金を科したが、これについては当事者のみならず、アメリカの産業界からも異論が出され係争となっている。もちろん日本企業にとっても対岸の火事ではない。実は日本では、ヨーロッパの個別の国家についての研究者はいても、EUの研究者となると意外なほどに少ない。EUが提起する新たなスタンダードを理論的にも実践的にも研究していくこと、その人材の育成は焦眉の急だ。

 一橋大学はこれまで、法学研究科の二一世紀COEプログラムにより、あるいは域外でのEU研究振興のために欧州委員会が助成する研究拠点であるEUインスティチュート・イン・ジャパンの運営コンソーシアムの幹事校として、ヨーロッパ研究の日本における中心を担ってきたと自負している。

 こうした研究蓄積を生かし、さらに戦略的に発展させるべく、EU研究で長い歴史と人材豊富な慶応義塾大学と対等な立場でパートナーシップを築き共同大学院の設置を目指すことになった。

 そもそもこの二つの大学は共に「民」を志向し、官界よりは経済界に多くの人材を輩出してきた。さらに言えば、明治において、一橋大学の前進となった商法講習所を開いた森有礼と福澤諭吉は学術啓蒙団体「明六社」の同志であり、商法講習所の開設に当たっては福澤が尽力している。

 一三五年の時間を超えたパートナーシップの実現。しかも国立大学と私立大学という組み合わせで共同学位を授与する大学院の設置はかつてない取り組みであり、そのインパクトは大きいだろう。

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(別ウィンドウで開きます)』誌2008年11月号(ダイヤモンド社)、OPINIONページに掲載

 
 

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