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「今、なぜEUなのか? 〜『戦略的大学間連携支援事業』「世界最高水準のEU高度教育研究共同大学院の設置を先端的事業とする大学連携」のシンポジウムによせて〜」 慶應義塾大学法学部教授、ジャン・モネ・チェア EU Studies Institute in Tokyo所長 田中 俊郎

 現在、世界は、米国で発生したサブプライムローン問題に端を発した金融・経済危機で大揺れに揺れています。世界中の株式市場で株価が急速かつ大幅に下がり、外国為替市場では急激な円高が進んでいます。このところ経済的に安定していたヨーロッパも大きな影響を受け、ユーロも対円相場は、約170円から約110円台まで一挙低下しました。
 本日のシンポジウムのテーマは、「ユーロ・スタンダードの可能性」と題して行われますが、換言すれば、EUが作成するスタンダードは、グローバル・スタンダード化しているのか?さらに、EUは国際社会でどのようなプレーヤーであるかを検討することになります。
EUが遂行するすべての政策決定が対外的な意味をもち、EUの広義の対外関係が世界中にその影響力を強めているとともに、いろいろな問題に直面しています。

競争政策において、世界中で影響力を強めるEU基準

 一例として、EUの日本を含めた域外企業に対する競争政策は、1980年代半ばまではもっぱらダンピング(不当廉売輸出)の取り締まりが中心でしたが、最近では反トラスト規制(談合による市場分割の摘発)が多くなりました。多額の罰金を科せられたYKK、東芝、日立製作所、三菱電機のほか、板ガラス、ビール、業務用ビデオテープなどいろいろな業界の日系企業が摘発されています。もちろん日系企業だけが対象になっているわけではなく、お膝下のヨーロッパ企業も摘発され、米国のマイクロソフト社は、支配的地位の濫用で摘発され、罰金を課せられました。いずれも裁判所で係争中ですが、EUの政策と基準が世界的に大きな意味をもつていることを示しています。

国際社会をリードするEUの環境政策

 次に、環境政策を取り上げてみましょう。京都議定書の作成と発効において重要な役割を演じたのはEUであり、さらにポスト京都の枠組み作りにおいてすでにイニシアティヴをとってリードしているのもEUです。またEUが2006年7月に施行した電気電子機器における鉛、水銀、カドニウムなどの有害物質の使用を制限したRoHS指令、さらに2007年6月に施行されたREACH規則は、化学物質の登録・評価・認可・制限に関するEU基準ですが、日本の企業もこれらの規準や手続きを遵守しないとヨーロッパに製品を輸出できないし、現地生産もできなくなりました。このように、5次わたる拡大によって27カ国に広がったEU域内だけでなく、EU基準が実質的なグローバル基準になりつつあります。

注視すべきEUの安全保障政策とその課題

  2003年12月ブリュッセル欧州理事会は、「よりよい世界における安全な欧州 欧州安全保障戦略(A Secure Europe in a Better World, European Security Strategy)」と題した安全保障戦略文書を採択しました。共通外交安全保障政策(CFSP)上級代表のハビエル・ソラーナの名前で発表された本文書のなかで、「EUは、世界における『グローバル・プレーヤー』であることから逃れることはできない」。(中略)「ヨーロッパは、グローバルな安全保障と、よりよき世界の構築における責任を共有する準備を整えなければならない」と宣言しました。2003年は、EUにとって、CFSPの一部である欧州安全保障防衛政策(ESDP)の元年といわれ、最初のミッションとしてEU警察ミッションがボスニア・ヘルツェゴビナに派遣されたのを皮切りに、3月には最初の軍事的ミッションとしてConcordiaがマケドニアに派遣されました。その後も約20のミッションが派遣され、最近ではロシアのしっぺ返しを受けたグルジアにも停戦監視団がEUから派遣されています。

 

 しかし、そのEUも、この4年間、内部に大きな問題を抱え、沈滞状況にあります。2004年10月に調印された欧州憲法条約が、2005年5月と6月にフランスとオランダでの国民投票によって、その批准が拒否され、棚上げ状態が続いたからです。やっと2007年6月ブリュッセルでの欧州理事会で、欧州憲法条約をリセットして、改革条約を採択することを決定しました。7月23日には、条約改正のための政府間会議(IGC)が正式に招集され、12月13日にはリスボン条約として調印されました。そのリスボン条約も、27構成国のうち25カ国の議会で承認され、その多くで批准されましたが、2008年6月12日、27カ国中唯一国民投票で行ったアイルランドで批准を拒否され、本年11月の新欧州委員会の成立までに、アイルランドで2回目の国民投票を行い、発効させようとしていますが、その前途はまだわかりません。

今こそ、EUについて正確に識り、EUに通じる人材の育成を

 その上、今回の金融・経済危機です。しかし、米国発の金融危機に対して、団結して対応を協議し、すばやく対応策がとれたのはEUのお蔭であり、ユーロや欧州中央銀行(ECB)がショック・アブゾーバーの役目を果たしていると考えます。もちろん、危機は終わったわけでなく、今後も世界的に実態経済の弱体に伴い、苦しい状況が続くだろうと予想されます。このような状況にあって、国家が単独で問題を解決することは不可能であります。現在EUは、その決定によって世界の平和、安定、繁栄をリードしていけるのかが問われています。

 私は、わが国においてEUは過小評価されていると思っています。そのため、EUについてより正確な情報を提供し、EUにより通じた人々を育成する必要があります。本日の国際シンポジウムもその一歩ですが、両校の間で共同大学院設立に向けての協力を深め、実現させていきたいと思っております。皆様のご支援をいただれば幸いでございます。

 
 

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