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「EUの高等教育改革から何を学ぶか」 一橋大学・大学教育研究開発センター教授 松塚ゆかり

 ボローニャ宣言以後、EUの高等教育改革が、世界で大きな注目を浴びています。欧州高等教育圏を確立するという構想が着々と進んでいるばかりでなく、改革のプロセスがEU周辺国はもとより、オーストラリア、アジア、そして南北アメリカへと拡大し、国際的な影響力を高めているからです。高等教育研究の第一人者である米国のClifford Adelman(2009)は、The Bologna Process for U.S. Eyes: Re-learning Higher Educationの中で、「ボローニャプロセスはこれまでの歴史の中で最も影響力のある野心的構想であり、今後20年間に世界の高等教育モデルを支配するだろう」とまで述べていますi

 ボローニャ宣言の目的は、EU圏内の学生や研究者の流動を容易にすることに加え、圏外からも人材流入を図り、欧州の高等教育機関を先進的かつ質の高い知の拠点とすることでした。キーワードは「教育の質保証」と学生や研究者の「流動化」です。この目的を達成するために、ECTSiiやTuning Projectiiiをはじめとする単位制度の改革と学位授与制度の見直し、そしてエラスムス計画を中心とした奨学金制度の拡充など、次々と積極的な計画を打ち出し、実行しています。これらの施策により学生の大学間移動が活発になっただけでなく、ジョイントディグリーや共同学位などの連携学位の開発が進みました。また、転学や復学も容易になるため、生涯教育の発展にも繋がり、知的社会基盤を形成する複合的な効果をもたらしています。

 EU圏内もさることながら、ボローニャプロセスはここ数年来EU圏外へとその活動範囲を拡大しています。特に、2004年に修士課程以上を対象とした域内外の交流を促進するエラスムス・ムンドゥス計画を発足して以後は、EU高等教育機関の国際連携は急速に進展しています。2004年から2008年までの5年間に同計画に参加した大学は約400校、修士課程の設置数は103件にのぼり、EU域外の学生に約3,000の学位が授与されています。奨学金については、2008年から2009年にかけて域外の学生約2,000人、研究者450人に授与されています。

 人材の流動化が進むと、優秀な学生はより高度な教育が受けられる大学へ移動し、卒業後はその高度な教育の成果が認められる社会に居住します。故に、その地には優秀な人材が集まることになり、経済的な効果も高まります。このこと自体はこれまでもあったことですが、これまでと異なるのは大学の「高度性」が大学教育の質や内容、そしてその成果に具体的に言及し規定されることであり、またこのアプローチが国際的に波及する可能性が高いということです。そうすると大学にとっては、第1に国際的に魅力のあるプログラムを提供できるか、第2にその魅力が国際標準に即した説明力を以て正確に且つ広く伝えることができるのかということが課題となります。ボローニャプロセスで単位や学位の共通基準を確立しつつ、大学連携による特色あるプログラムを推奨する理由はここにあるのです。

 大学単位ではなく、プログラム単位で特徴を打ち出し魅力ある教育を実践する。すなわち大学という組織的なサイロを越えて、テーマもしくは分野を核としてそこに可能な限りの英知を集める。日本の大学がEUの高等教育改革から学べることは、大学や地域の違いにこだわらない、専門やプログラムをコアとしたホリゾンタルな連携を強化することにより、研究と教育の質を上げ、国際的競争優位性が確保できる、ということであると考えられます。慶應義塾大学と一橋大学のEU研究をコアとした連携事業は大きな可能性とそして使命を帯びていると言えます。

  • Adelman, Clifford, 2009. The Bologna Process for U.S. Eyes: Re-learning Higher Education in the Age of Convergence. Washington, DC: Institute for Higher Education Policy.
  • European Credit Transfer and Accumulation System:1ECTSを25~30時間、年間必要履修単位数60単位とし、EU全域の統一基準として大学間の互換を容易にしようとする制度。ボローニャプロセスを通して機関を越えた単位加算と累積が促進されている。
  • 科目、コース、プログラムなどにおける到達目標や学習成果、養成されるコンピテンスなどを明確に定義し大学間で共有すること。単位の比較性を確保し、共同学位やダブルディグリーなどの連携学位授与のために必要な手続きとされる。
 
 

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