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コラム 日本人が研究科をこえてEUを学ぶ意味 一橋大学経済研究所 専任講師 井上淳

 私は経済学部・研究科の授業を担当していますが、学生時代には政治学を専攻していました。EUを学ぶ意味については過去のコラムに掲載されていますが、ここでは異なる学部・研究科に所属した経験から、私たち日本人がEUを学ぶ意味を2つ挙げてみたいと思います。

1.学際的な理解、多角的な視座に慣れるトレーニング・ケースとしてのEU

 まず、EUを理解する過程で学際的な素養を試す事ができます。EUの起源ひとつをとっても、これを体系的に理解し、説明するためには、歴史学、経済学、国際政治学等、複数の学問領域の研究成果を用いる必要があります。和解の理念だけを理解の軸に据えると、戦後復興という現実要請が見えにくくなります。貿易や統合の経済効果理論だけを理解の拠り所にすると、域内交易を可能にしたより大きな背景には焦点があたりません。納得いく説明を形づくるために、専門用語や概念をどのように構成するのかが問われます。
 学際的に学びたいという方にとっては、様々な角度からの説明に触れて自分なりの理解を紡ぎだす事が、貴重な思考訓練になります。特定の学問領域に長じたスペシャリストにとっては、EUという共通の対象をめぐって専門の異なる相手と議論する機会が貴重になります。実りある議論が成立するためには、参加者の多様性、各人の確固たる問題意識と最低限の知識、そして共通の関心対象が不可欠ですが、全てを満たしている場は現実には多くありません。EU共同大学院にはこの点で貢献する事を期待しています。

2.客観的に日本を捉える比較対象としてのEU

 また、地理的に離れたEUの取り組みを知る事は、翻って日本がおかれている状況を客観的に理解する事に繋がります。双方とも低成長、失業率、競争力、少子高齢化等の問題に直面しています。それらへのEUの取り組みを観察すると、様々なレベルや立場から様々な見解が表明されている事実に触れます。ある問題がたとえばEU、加盟国政府、地方政府にどのように捉えられているのか、各々どのような対処を望むのか、どのような議論を経て最終的な対応を導き出すのか。これらを単に海外事情として知るのではなく、我々との比較を念頭におきながら理解する事によって、私たちは日本の現状とその対処法について自身の意見を持つに至ります。
 このとき、重視する側面や対処法が立場によって異なるという至極当然の事を、われわれは身をもって知ることになります。そうした発見を積み重ねる事によって、自身が重きをおく事柄、価値が明らかになり、ひいては社会との関わり方も自ずと定まってくるのではないかと思います。

 以上のように、私たち日本人が学部・研究科の枠をこえてEUを学ぶ意味は大いにあると考えています。

2010年4月26日脱稿

 
 

EUを学ぶということ

日本人が研究科をこえてEUを学ぶ意味

EUの高等教育改革から何を学ぶか

東南アジアにおけるEU研究の課題

5月9日がEUの誕生日である理由

EUのエキスパートを社会へ

今、なぜEUなのか?

EUというスタンダード